どこかで見た夏

その当時の中流のやや下ぐらいだったと思う。あまり豊かな家庭ではなかったのだろうけれど、主に母が気を使ってくれて大きな不自由はしなかった。でもだから旅行に行くのは国内で西日本で、というか四国内か岡山とか近くの観光地がほとんどだった。

 

何歳の年の夏だっただろう、家族で旅行に出かけた。目的地は聞いていたかもしれないけれど覚えていなくて、なんとなく四国のどこかだったような気がする。海の近くの拓けたところを車で通ったのをうっすらと覚えている。

 

到着した町はそれほど大きな町には見えなかったけれど、その時やたらと活気というか熱気があって町中がそのお祭りを待ち望んでいたんだろいうことは子供心にも感じた。民宿か小さな宿のようなところに予約をしていたらしくそこの窓から外を見るとお囃子が聞こえて提灯の灯りや夕焼けのの色が一面を橙色に染めていた。私は荷物を置いて親に小遣いを貰って出店へと向かったと思うのだがそのあたりから記憶が更に曖昧になっている。

 

ということを夏が来るとたまに思い出す。ただあの町は一体どこだったのか、あるいは私が見た夜の夢か何かだったのかが今となってはもうよくわからない。私は本当にいつかの夏にあの町に行ったのだろうか。